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 旧日記の小噺ログ。
 「in少年陰陽師 勾陳成り代わりネタ」です。星矢連載主でパチパチ打ってたやつですね。
 下に収納。



 その日は一日中稲光が空を駆けていた。黒々とした雨雲が隙間無く空を蔽い、日の出ているはずの昼間ですら薄暗く、夜明けか日が沈んだ後のように影を地面へと落としている。昼間ですらそうなのだから、本当に日が沈んだ夜ともなると、星明りも月明かりも見えぬために、あたり一面漆黒の闇に塗りつぶされていた。もちろん、空には未だに雷が轟いている。だというのに、空からは一滴も雨の雫が振り出すことは無く、不気味なものを感じさせた。

「やっぱり変だよねぇ」
「ああ」

 じっと簀子に出て空を見上げていた昌浩が呟くと、子供のように高い声が神妙に応じた。少年の足元には白い物の怪が足をそろえて行儀良くお座りしている。声と同じく真剣な表情で空を見ていた物の怪はひょんと、その長い尾を振った。長いこと生きてきた彼にも、こんな空模様は初めてだ。何か凶兆の前触れかと、その夕焼け色の瞳を細める。

「うーん、あまり嫌な予感はしないけど……」

 顎に指を沿え、眉間に皺を寄せる昌浩に、物の怪はもう一度尾を振り、難しい顔をして悩んでいる子供を見上げた。

「そんなに気になるんなら占じてみたらどうだ」
「もうやった」

 ぶすくれながらもそう返された言葉に、何時も共に行動している物の怪はいつの間にと思いながら続きを促す。

「でも何にも出なかったんだよ」
「何も?」
「そう、なーんにも」
「……占が苦手だからといって結果まで出んとは、精進しろよ晴明の孫」
「孫言うな! そうじゃなくてっ、本当に何も分からなかったんだよ! 確かに俺は占が苦手だけど、答えが何にも出ないなんて、初めてだよ」

 困惑した表情で言い募る昌浩に、物の怪はぱちくりと瞬く。占の結果が出ない。これはいったいどういうことか。自分で交ぜっ返しておきながら何だが、この少年の陰陽師としての潜在能力を知っているのは晴明の外には自分が一番であると物の怪は自負している。その、将来きっと多分有望な陰陽師が占じることができないと言っているのだ。むむむ、と物の怪は眉間に皺を寄せる。

「晴明に聞くべきか?」
「げっ」

 物の怪の口から漏らされた言葉に、昌浩は呻く。歪んだ顔一杯に、「それは嫌だ」とでかでかと書かれていた。まぁ嫌がるだろうと分かっていた物の怪は、ため息を吐いた。

「何だよその溜息は。何度占っても結果が出ませんでした、だから教えてください何て言ったら、『何、結果が出なんだと? 昌浩や、お前には小さな頃から瓶の水を移すが如くじい様が事細かに教えてきたというのに、それは全て無駄だったのか。これはまた一からじっくりと教え込まねばならぬなぁ。あぁ、じい様は悲しい、悲しいぞ。どうにもこうにも要修行』とかなんとか言って流れてもいない涙を袂で拭う振りをするに決まってる!」

 想像の中の祖父の言葉に腹が立ったのか、昌浩はと拳を握り締め、ふるふると震わせる。その想像力のたくましさと正確さに、相変わらずだなぁと物の怪は呆れると共に感心した。確かに晴明を頼れば似たような内容の言葉を口にするだろう。愛情表現の仕方が素直じゃない彼の祖父は頼られた事を内心喜びながらも、それをネタにして孫をからかい倒すのだ。
 あんのくそじじいー! と心の中で叫んでいるであろう昌浩を見上げていると、背後でゆらりと神気が揺れた。慣れた神気に振り返ると、同朋がにやりと口角を吊り上げていた。

「そうでもないぞ、昌浩」
「勾陳」
「どういうことだ? 勾」

 勾陳の声に振り向いた昌浩と物の怪が読めない笑みを浮かべた彼女を見上げる。

「晴明も占じていたが、どうにも結果が出ないらしい」
「じい様が!?」
「晴明がか!?」

 声をそろえて絶叫する一人と一匹に、勾陳はこくりと頷いた。晴明に使える十二神将でありながらも一風変わった立ち位置にあり、安倍邸や異界から離れていることのほうが多い勾陳は全く動じていないらしく、彼女は彼らとは違い平然とした表情で静かに佇んでいた。
 そういえば勾陳がこの場にいるのは珍しいと、驚きながらもいつもの冷静さを保ったまま隠形していた六合は内心で感想を漏らした。

「そういえば勾、お前いつの間に戻ってきてたんだ?」
「そういえばそうだね。あ、何か危険でもせまってたり……!?」

 危ない時は助けてくれるが、平時は全く持って姿を見ない彼女の姿がこの屋敷にあることに、昌浩と物の怪は緊張した面持ちで柱にもたれ腕を組む勾陳の返事を待つ。しかし彼女は彼らの予想を裏切って、変わらぬ調子でいや、と否定した。

「ただ何となく、予感がしてな」
「予感?」
「そう」

 そうして、彼女の笑みをかたどった形のいい唇が、「再会の」という言葉をかたどると同時に、空を走っていた雷が、轟音を辺りに響かせながら、黄金の光と共に彼らがいた簀子の先にある庭へと突き刺さるように落ちた。

「うわっ!?」
「昌浩!」
「!」
「……来たか」

 視界を白く染める光と鼓膜を震わせる音に耳を塞いだ昌浩は悲鳴を上げ、その光の中に妖気を感じ取った物の怪と顕現した六合は昌浩の前へと飛び出した。轟音に混じり誰の耳にも届かずに消えた呟きは勾陳の口から小さくこぼれ、彼女は妖気の中に混じる懐かしい気配にそっと、嬉しそうに目を細める。
 しゅうしゅうと、落雷した地点から何かが焼け焦げた臭いと白い煙が立ち昇っていた。空から落ちた金色の光は収束し、何かの獣の形のようなものを取る。そこからは、強大な妖気――ともすれば今まで対峙してきた妖怪の中では随一だ――が漂ってきている。
 物の怪と六合の背中からその妖気の元を見つめて、昌浩は背筋にびっしょりと汗をかいた。妖だ。それも、とても強い。あの、大陰陽師安倍晴明の結界すらも何の抵抗も無く破って入ってこれるほどの敵など、見たことも聞いたことも無い。ごくりと、緊張でからからになった口の中から唾液をかき集め、ごくりと飲み下した。
 光が霧散する。そこから現れたのは、獅子の体躯に背中に雨雲のような鬣、全身に雷の形の黒い隈取、全身が金色に輝く、禍々しさよりも神聖なものを感じさせる美しい獣だった。その背には、藤色の髪の、小柄な影が。黄金に輝く妖獣の背に伏せていたらしい上体を起こしたその面は、人間離れした美貌を持った女性だった。彼女も妖かと目をすがめ警戒する物の怪と六合が感じたのは、予想と反して紛れも無い神気で、何故神が妖と共にいるのだと思いながらも警戒は解かずに、彼らは突然降ってきた闖入者に向き合っていた。
 ぴりぴりと空気に緊張が走る中、女神が妖獣の背から降りようとする。半歩前に出る六合と物の怪に、ちらりと視線をやるだけで歯牙にもかけず、女神へと話しかけた。

『まだ降りるな。足が汚れるぞ』
「でも、いつまでもあなたの背に乗っていては……」
『いいから』
「……はい」

 頬を染めて頷いた女神を気遣う妖獣の声はどこまでも優しく、昌浩は先ほどまで感じていた恐怖を忘れぱちくりと瞬く。なんだか、片や妖ではあるが彼らを見ているようだ。朱雀と天一の二人を。
 殺気も何も向けられる事無く、むしろ桃色の空気をかもし出す妖と女神に、物の怪と六合も内心困惑する。けれども再び彼らに視線を向けた妖はまぎれもなく窮奇以上の大妖怪で。

「ほぅ、雷獣とは珍しい」
「晴明」
「お前、何でこんなところに!?」

 彼らの間に走る緊張も意に介すること無く、晴明は暢気に呟いた。六合はそんな主を視線で物の怪は声を上げてとがめる。晴明の背後に控える青龍と天后も渋い顔をしている。そんな中勾陳だけは変わらず口元に笑みを浮かべていた。

「貴方が、安倍晴明殿ですか?」
「いかにも。貴女様方はいかような御用で、我が家へいらしたのですかな?」
「ああ、突然失礼したしました、無礼をお許しください。何せ空路のほうが早かったものですから。こちらへは氷澄様の知らせ聞き伺いました」

 氷澄。
 少し前に都を発った月の眷属たる女神の名に、その場にいた者たちはいっせいに勾陳を振り返った。
 大勢の視線を受けても、彼女は悠然と柱に背を預けたままで笑みを浮かべている。それは彼らの反応を楽しんでいるかのようでもあった。
 女神を乗せた雷獣は、簀子へと近寄り背の女神を下ろすと、女神はじっと勾陳を見つめ、翡翠のような瞳を潤ませるとすっとその場に膝を折り頭を垂れた。雷獣はというと、簀子に向かって飛び上がると瞬く間にその姿を人形へと変え、女神の一歩前で同じように跪く。その様子に、彼女達を見つめていた面々は女神が雷獣を従えているのではなく、雷獣が女神を従えているのだという事実を悟り、目を丸くした。

「ご健勝そうで何よりです、漣様」
「お前たちもな。それよりも顔を上げて何時ものように話せ、気色悪い」
「気色悪いなんてひっでー!」

 意地の悪い笑みと共に告げられた言葉に、雷獣が顔を上げてすくりと立ち上がる。拗ねたような言葉とは反対に、森の緑を思わせる瞳は喜びに輝いていた。跪いた姿勢から正座した女神は、そんな彼に様子に袂で口元を隠しくすくすと笑う。
 勾陳――漣の瞳も意地の悪そうな笑みとは別に柔らかな光を宿しており、彼らを大切思っていることが容易に知れた。

「久しぶりだな、レグルス」
「うん、久しぶり、姉さん」

 家族に話しかけるような深く温かみのある声に、レグルスと呼ばれた雷獣は人懐こい笑みをにこりと浮かべた。

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設定は以下。
 主人公はインフィニ主で、人としての生を全うしたと思ったら何故か勾陳成り代わり。周囲には旦那も悪友も弟分たちもおらず、一人寂しく異界で過ごしている。そのうちに安倍晴明に仕えることに。
 一応、異界から出て友人達がいないかどうかを探してはいる。
 晴明に下るときに、自分は探しモノをしていて緊急時以外はそちらを優先すると宣言している。
 とりあえず、全員に会えるのは孫が生まれて成長してから。
 一応聖闘士だったころの技は使える。(使えるようになるのはフィーと再会してから)

一覧

○漣…十二神将勾陳。人のときの力を使えば騰蛇に勝るとも劣らず。原作の勾陳ほど仲間との交流は無い。(放浪してるから)

○レグルス(獅子座)…雷獣。(落雷と共に現れる雷を司る妖怪)(モデルはポケモンのライコウ) 本性は獅子の体躯に背中に雨雲のような鬣、全身に雷の形の黒い隈取。金色に輝く。 体長1.9m。獅子の子供の姿にも変化できる。もちろん窮奇以上の大妖怪。

○ムウ…鍛冶の神の眷属。レグルスと共に行動している。女体化。

 フィーやフーガ以下、外の拙宅の黄金達の設定も立ててますが上記の小話には出ていないので割愛。
 ちなみに名前だけ出ている「氷澄」は後に出てくる予定の蟹座です。でも本名は別にあります。「氷澄」は二つ名。一言で言うとインフィニ主(漣嬢)命の奴です。こいつも上記小話では女体化してます。


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