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 迷子になっちゃった。
 そう気付いた瞬間、梅崎露丸はぺったりと地面に座り込み、泣き出してしまった。迷子だと気付いた場所が、滝があるとても綺麗な場所で、何故だか安心してしまった事もあるかもしれない。少しばかり情けないと思いながらも、零れだした涙は止まらず、嗚咽も止まらなかった。

「おや、騒がしいと思うたら……」

 わんわん泣いていると、露丸の前に影が落ち、美しいとしか言えない声が呆れたように言葉を紡いだ。その声のあまりの美しさに、止めようとしても止まらなかった涙と嗚咽が嘘のように止まり、露丸は顔を上げる。そして、ひゅっと息を呑んだ。
 引きずるように長い白銀の髪、月の光のように淡い金色の瞳に、透き通るような白い肌。目も鼻も口も極上の造りをしており、それらが小さな顔に完璧なバランスで配置されている。美しいと言う言葉すらも陳腐に響くであろう美貌と、縦に長い虹彩が、彼が人ではないことを証明している。
 魂を持っていかれそうなほどの衝撃を受けながら、露丸は涙でぼやける視界をはっきりさせるために目
をこすった。

「そのようにこするでない。赤くなってしまうぞ」

 白く美しい長い指が、そっと露丸の小さな拳に触れた。その手の冷たさに一瞬ビックリしながらも、目元に優しく触れる指先が心地よく、露丸は涙を払った後で離れていこうとした指を両手で捕まえた。じっと、無垢な瞳に見上げられ、目の前の彼は困惑したように眉間に皺を寄せる。

「あなたは龍神様ですか?」
「……我を知っておるのか」

 小さく首を傾げた神に、露丸はぱぁっと明るい顔をして、先ほどまで涙に濡らしていた顔に笑みを乗せた。神は露丸のその表情に、数度瞬く。

「学園長先生が言ってた事、本当だったんだ!」
「学園長……あぁ、忍術学園とやらの子供か」
「はい! 学園長先生は、山の中にはとっても美しい滝があって、そこには龍神様がいらっしゃるんだって言ってました。そこを見つけたら、その場を荒らすような無礼はしちゃダメだっ、て……」

 さぁっと露丸の顔が真っ青になる。大きな瞳には涙を浮かべ、捉えている神の指をきゅっと握り締めた。

「あの、あの、ごめんなさい!」
「何がだ」
「う、うるさくしちゃって……」

 その言葉に神が現れたときの言葉を気にしての謝罪だと知り、神は気にしてはいないと小さく頭を振った。すると、露丸はほっとしたように笑みを浮かべた。
 くるくると、良く表情の変わる子供だ。それを面白く思いながら、神は小さく笑みを浮かべた。麗しいことこの上ない神の笑みに、子供の顔がぽんと赤くなる。

「神子は何故泣いていたのだ?」
「……迷子になっちゃいました」

 ミコという単語に首を傾げながらも神の質問に答えると、現状を思い出した露丸は再び目に涙を浮かべ、ぐっと口元を引き結ぶ。泣かないでいようと頑張っている露丸に、神はそっと手を伸ばし、小さなその体を抱えあげた。
 急に高くなった視界と、間近に迫った絶世の美貌に、わたわたと両手を振り回した。その様子に、くすりと神が笑う。

「ならば我が近くまで連れて行こう」
「龍神様が?」
「ああ」
「ありがとうございます!」

 ぱぁっと顔を輝かせて、露丸は神の首にぎゅっと縋りつく。神は思いの外強い力と高い体温に、これが人というものかと目を瞬かせた。今まで人と関わるのを避けてきたが、これは案外悪くは無い。 何より、神子であるこの子供はくるくると変わる表情が面白く、神を厭きさせなかった。

「神子の名は何と言う?」
「露丸です。梅崎露丸といいます! 龍神様のお名前は何と言うのですか?」
「我の名か……」

 名というのは最も短い呪である。明かさぬ方がいいのが神の住む世界の常識ではあるが、神子一人に教えるのならば良いかと神は結論を出した。何より、神子とはいえ人間一人に神である己が縛れるとは思えない。

「我はタマノミナアワノオカミノカミという」
「た……?」

 神が口にした長い名前に、子供は目を点にして首を傾げる。その様子に、どうにも理解できなかったらしいと悟り、神は苦笑を浮かべた。

「神子には難しいか」
「ごめんなさい」

 あからさまにしゅんと落ち込んでしまった露丸の頭を、水和はそっと撫でた。

「よい。我の事は……そうさな、水和と呼ぶがいい」
「みなわ、さま?」
「そうだ」
「水和様!」

 きらきらと、輝かんばかりの笑みを浮かべた露丸につられるように、水和と名乗った龍神はその美貌をとても柔らかに和ませた。


 



 初代神子と水和様の出会い。
 と、水和様の本名初公開。水和様の本名を漢字で書くと、珠水沫龗神となります。滝で出来る水しぶきが真珠のように美しいところから「珠」で、水の泡は「水沫」とも書ける。で、「みなわ」と引くと左記の感じも出てくるので「珠水沫」(たまのみなあわ)、「龗」というのは、「龍の古語であり、龍は水や雨を司る神として信仰されていた」とウィキペディアにあったので、そこからひっぱってきました。
 便宜上の水和様という名前は、上記の本名の「みなあわ」を縮めて呼んで漢字を変えたものだったりします。こう書くと水和様の呼び名が後に出来たようにも見えますが、この話を書くまで水和様の本名なんて全く決めていませんでした。だってずーっと水和様で通すつもりだったから。なので水和様の名前は呼称の方から出来て、本名は呼称からひねり出しました。こんな所に管理人の無計画性が出ています。

 さて、初代神子の梅崎露丸くん。最初は霧丸くんにしようと思いましたが、原作主人公組のきり丸くんと被るので却下。で、水に関係した名前が良かったので露丸くんになりました。苗字の梅崎は、この子の名前が「つゆまる」(雨の良く降る季節が梅雨(つゆ))だから。
 詳細は以下。

名前:梅崎 露丸(うめざき つゆまる)
所属:は組、体育委員会 → 火薬委員会(水和の神子と言うことで契約後移動)
容姿:明るい茶髪に青味がかった黒い瞳。髪は猫毛でふわふわしている。
性格:素直。ころころと表情が変わる心身一致型。
備考
 学園の初期の頃の生徒。多分三期生くらいで、水和の初代神子。
 あまりオツムの出来はよろしくないが、は組の子供らしく仲間思いの優しい子。
 人間とは関わらずにいようと思っていた水和にすんなり神子として受け入れられる辺り、本当にいい子。ちなみに水和の神子であっても伴侶というわけではなく、あくまでも保護者と被保護者という関係。水和に人間に神と人との違いを根気強く教えていった凄い人物でもある。
 水和との出会いは、一年生の頃、地獄の体育委員会活動で山を走っていた途中で迷子になった所を保護してもらったというもの。運が良かったのは水和の神子であった、という辺り。神子でなかったら例え水和の住処の滝の近くで泣いていても助けてもらえなかったに違いない。
 学園を卒業した後は普通に就職して普通に結婚して子供もできて、普通に寿命でお亡くなりになります。水和の加護のおかげか、死ぬまで水に関することで困ったことはなかったらしい。


 しっかし相手のはずの兵助が全く出てないです。えへ。


 

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