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 忍術学園は龍神様を守り神にしている。その事実は、忍術学園に所属する全ての人間が知っていた。そして誰もその存在を疑ってなどいない。何故ならば、三年生以下の生徒ならば絶対に見えて話せて触れてしまうのだ。だから、皆一度は龍神様に目通りする事が叶う。
 四年生以上になると見えない人間が出てくるのは、授業の内容による所為だ。四年生になると色の授業が始まる。神に仕える者には純潔が求められるのは今も昔も変わりはしない。けれども見える見えないは体質に左右されるらしく、見えるものは大人でも見える。そんなことなどお構い無しに龍神様に接触を取れるのは、契約者たる学園長にヘムヘム、火薬委員会に所属する生徒とその顧問の土井、そして龍神様が特別に許した人間のみであった。
 何故火薬委員会なのかというと、火薬を収納している蔵には火避けのシンボルとして龍の字が掲げられている為である。学園を守護する龍神様は、学園の中で最も重要で水と深く関わりのある焔硝蔵の近辺を、自身の拠点として定めていた。その龍神様の関与が最も深い場所であるために、火薬を管理している火薬委員会には、龍神様と相性のいい生徒が必要だったのだ。故に委員の選出は龍神様が直接行っており、重要な仕事を任されて入るものの所属する人数が他の委員会と比べると圧倒的に少ない。つまり、委員会としての利便性よりも龍神様の巫としての役割の方が重要視されているのだ。
 能力よりも相性が最優先される。中でも、当代委員長代理たる久々知兵助は、近年稀に見るほどの相性の良さを誇っていた。彼は龍神様曰く、百年に一度現れるか否かと言われる『龍神の神子』なのである。

「神子」

 とろけるような甘い声が、兵助を呼ばう。うっとりといつまでも聞いていたいような美声に、兵助はふと庭を振り返った。神子、と兵助を呼ぶのは、この学園――いや、この世界にはただ一柱しか存在しない。

「水和様」

 頬を染め、目を見開く兵助に、水和はふわりと嬉しそうな笑みを浮かべる。その笑みの美しさは――いや、容姿そのものが、言葉に出来ぬほど見事なものであった。
 地に引きずるほど長い白銀の髪、月のように淡い金色の瞳、日に焼けることなど知らぬ白く抜ける肌。顔を形作る一つ一つのパーツはどんな職人でも作り上げられないような素晴らしい造詣を持っており、それが小さく形の良い顔の中に絶妙なバランスで治まっている。そのえも言われぬほどの美貌と、縦に長く伸びる虹彩が、水和が人ではありえないことを証明していた。彼はこの学園を守護する龍神なのだ。池の上に浮んでいたその神は、滑るような足運びで兵助へと近づいてくる。

「どうかなさいましたか」
「何、神子の顔が見とうなっただけよ」
「お呼びくだされば、こちらから参りましたものを」
「気が向いたゆえな」

 温度の低い手がさらりと兵助の頬を撫でる。縁側の上に立ってやっと同じ目線にある水和の顔を見返し、凄まじい美貌を直視できずに視線を落した。なんとも可愛らしい兵助の反応に、水和は優しい表情を浮かべたままで淡く色づいた頬に口付けを落とした。

「っ、水和様」
「ふふ、いつまで経っても慣れぬな。可愛らしい事よ」
「……からかわないで下さい」

 唇を尖らせ、拗ねたように詰る声は甘い。そんな反応に、水和は上機嫌になる。

「からかってなどおらぬ。美しく可愛らしい伴侶を得られて我は幸せぞ」

 本当に幸福そうな笑みを間近で浮かべられ、真っ直ぐに告げられた言葉に兵助はぽんと赤くなった。人とは違って見栄とも虚勢とも嘘とも縁の無い神であるがゆえに、水和の言葉は疑う余地など無く真っ直ぐに兵助の中に響いてくる。

「それに我が神子はとても賢い」
「やめてください、水和様。羞恥で心の蔵が止まりそうです」
「おや、それはいけない」

 どこかおどけたような声で言って、水和は兵助に寄せていた顔を離した。けれどもその顔に浮んだ春の木漏れ日のような柔らかな表情は変わらず、眩しいものでも見るかのように細められた目からは愛情が零れ落ちるようだった。

「そうだ神子、今宵は我が宮で月見をしよう。月はいつ見ても美しいが、神子がおればなお美しく見える」
「……伺わせていただきます」

 溢れんばかりの愛情がそこかしこに散りばめられている台詞に、許容量を超えて気を失いそうな思いをしながらも、兵助は水和の誘いに是と頷く。途端、水和はその美しいという言葉さえも陳腐に聞こえる美貌に満面の笑みを浮かべ、兵助は頭に血が上りすぎてくらくらするのを感じた。



 以前載っけていた龍神様な主人公と神子様な久々知。
 「世界一受けたい授業」で武田鉄矢が「蔵などには龍という字が火よけとして掲げられていた」という話をしていた所、ぴーんときてさくっと設定が立ちました。蔵+火よけ→焔硝蔵→火薬→火薬委員会→秋月は久々知大好き、な思考回路。なので火薬委員会びいきで久々知お相手な話がまたまた追加、と。
 ちなみにここでは巫女=神様との窓口。神子=神様の伴侶。という解釈でお願いします。

 ちなみに龍神様は男神です。本名は別にありますが、便宜上水和(みなわ)様と呼ばれてます。
 守護領域は忍術学園が所有する土地全て。つまりは裏々々々……どれだけ山を所有してるかは知りませんが、つまりはそれだけ広大な領土を一人(いや、神様だから一柱か)で守護してます。なので神格も他の土地神と比べるとごっつい上。でも最初から土地神だったわけではなく、学園長と契約したから忍術学園の守護をしています。神様の中でも変わり者扱いされてたり。
 この龍神様は焔硝蔵を本拠地にしてはいますが、焔硝蔵そのものに住んでいる訳ではなく、そのあたりに亜空間にある自分の屋敷の出入り口をつけてる感じ。
 ちなみに学園の領域内であれば水脈を伝って簡単に移動できます。限りなく瞬間移動に近いかもしれない。

 この夫婦(?)は疑う事無く超仲良しなので何も考えないで書いてます。相手が人外だから性別以前の問題だしな!
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