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 新年明けまして、おめでとうございます。
 今年も当サイトと管理人をよろしくお願いいたします。


 というわけで、新年です2011年です。後数十分もすれば日付も変わりますけどね。
 年末年始は妹しかいない実家で過ごして、ストレスとはほぼ縁のない二日間ではございましたが、明日になったら父が帰ってきます。それだけで今から憂鬱とかどんだけー……。
 まぁ、そんなんで料理とかも自分でしてたんですが、今日かに玉作ってるときにフライパンで親指と人差し指を火傷して、水ぶくれが出来ました。痛かったです。今はもう治まってるんですけど、キーボード打つときに絆創膏は邪魔ですね。非常に。いらんキーまで押しそうになります。というか時々押しちゃってます。早く治れー。


 一月九日はインテの日。久々に行きたいなーとか思ってます。だぶるお本が欲しいよー。欲しい本が通販でないんですよ、現地行って直で買わなきゃ。それか大阪まで出て中古で漁らなきゃ駄目っぽい。それでゲットできるならそれでもいいけど、ねー。一人で大阪まで出るのは微妙。身軽だけど微妙。友達誘うべきかしら?
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 久しぶりに更新しました。なので普段表に出さないヤツのお知らせもしちゃいます。てへ。
 【曼珠沙華は鬼の手に咲く】の伊作編・中編をアップ。やっとできました。お待たせしてすみません。
 なんだかやっぱり、阿修羅は最低ですね。そう書いてるから仕方ないんですが。
 しっかし、本当にあと後編ひとつでくっつくんだろうか……書いてる秋月がちょっと分からなくなっちゃってます。えー、大丈夫かな、本当に。
 理由は読んでいただければわかるのではないかと。


 話は変わりまして!
 24日に、予約していた劇場版00のBDが届きました! 予想以上に重いし分厚いし、ちょっとどうなってんのコレ、とか思ってたら半分以上絵コンテの冊子の重みでした。うわー、すげー。
 しかも映画のフィルムも入ってたよ! マリナ様が引き取った孤児(成長後)と取った写真だけがずらっと並んでるなんとも微妙なシーンだったけど。どうせならニールさんが欲しかったです。(兄貴ファン) 
 目的が劇中劇の予告とかが入ったディスクだったんで、あまり詳しくチェックしてなくてビックリです。そしてインタビュー諸々が入った冊子。キャラクターカードが手に入らなかったので、それが収録されてて嬉しいです。しかしながら、沙慈の項目に出てくる緑の機体……おーい、目撃されてますよライルさーん。思わず生温い笑みを浮かべてしまいました。詰めの甘いライルが可愛いです。


 それでは、拍手のお返事いってみましょー!


 歩く。
 走る。
 止まる。
 左手のスパッドを上段から振り下ろす。
 右手の実剣で素早く連続で突きを繰り出す。
 そんな動作を繰り返しながら、泰晴は軽い、と心の中で呟いた。動きが、コレまで扱ってきたどのMHよりも軽く感じられた。エトラムル・ファティマとはまるで違う――積んでいるファティマは、泰晴がその才能を見出した伊作が最高傑作と言ってしまえるほどのスペックを誇っているので、エトラムルなど比較にもならないが――その動きは、生身に近いものがあり、三郎と“白雪”よりも強い一体感を感じた。
 そう口にすれば、上のファティマシェルの中で“艶夜”を動かす事に腐心している兵助は、きっと喜びや誇らしさを隠しもしないで自分達はマスターの為だけに存在するのだと事も無げに言い放ってくるのだろう。それが少し、重いと思う。
 泰晴は騎士だ。それも、超帝國の純血の。前世紀の遺物であり、本来この世界にはなかったはずのもの。己を育む母胎すらなく、生まれてくることさえ、受精卵の時点で諦めていたことさえあった。生まれても親もおらず、養い親にとってはただの研究対象で、子など望める存在ではなく――仮に受精できたとしても、超帝國の騎士の力に受精卵が絶えられず、人の姿をとるまで育つ事が出来ないのだ――その特殊な生い立ちからまともに仕える事の出来る国もない。もっとも、仕える国のない事は、ひとつの所に身を置いて気に入らない人間に頭を下げる事を心底嫌う泰晴にとって、割合どうでもいいことでもあるのだが。
 そんな訳で、泰晴はないないづくし――というには、色々なものを持ってはいるが――の人生に慣れていた。むしろ何のしがらみも持たない身軽さと言うものを、好んですらいた。そこに、降って湧いたように出てきた、『自分の為にある』と主張する存在。ファティマもMHも泰晴の行く道を阻害せず、むしろその助けになるような代物ではあるものの、そこに他人の意志が入ってくると、動きにくくなる。
 精神的に重い。
 けれども泰晴は小さく息を吐いただけで、その思いを呑み込んだ。

「腕と足の動き、後コンマ05秒早くできるか?」
『可能です。この子のスペックなら、あとコンマ2秒加速できますが』
「騎体への負担は?」
『3%増です』
「……微妙な数字だな」

 実戦に出て、長期戦になってしまえば、どこでその数字が悪影響を出すか解らない。

「もう少しダメージ減らせるか?」
『騎体制御次第では可能かと』
「パターン出せ」
『はい』

 一秒と経たず、コンソールにかかる負担を散らす行動パターンがいくつか出てくる。その動きを一通り頭の中に叩き込んで、画面を切り替えた。そして、その通りにMHを動かし、実際にかかった負担のパーセンテージを出した。確かに、かかる負担は軽減している。しかし、その分今まで負担のかかっていなかった部分に、そのダメージは移行していた。

「……これ以上は騎体自体をどうにかしないと駄目か」
『後ほど食満博士にデータを転送しておきます』
「ああ」

 今までに乗ってきたMHと比べると、これ以上ないほどに良い騎体だとはいえ、専用機としては、まだまだ完成しているとは言いがたい。故に“艶夜”は、実際に乗って泰晴の癖を覚えこませなければならず、細々としたチューニングを必要としていた。
 思っていたよりも抵抗されずに送り出された訳である。
 実ににこやかに泰晴と兵助の乗ったドーリーを見送った科学者二人を思い出し、僅かに口元を歪めた。いつもならば小さい子供が駄々を捏ねるように泰晴が旅立つのを嫌がるというのに、またすぐに会えると知っていたから、あの二人はいつものようにぐずる事もなかったらしい。だとしたら、大変なのは完全にチューニングした後だ。
 泰晴はその時の労力を思って、深々と溜息をついた。彼らがそうなったのは、伊作がファティマを作る為の設計図を書き出した途端、泰晴が彼らの自宅兼ラボに寄り付かなくなり――何度も言うが泰晴はファティマ嫌いだ――挙句20年近く音信不通になった所為なので、ある意味自業自得なのだが。そんな事で疲れたくはないが、チューニングは必要だ。面倒を嫌う泰晴がそう思うくらいには、“艶夜”は魅力的な騎体だった。

「チューニングに出す前に、少なくとも一度はMH戦を経験しときたいが……」
『遭遇できそうな場所を割り出しましょうか?』
「そうしてくれ」

 それと、一度は街に向かった方がいいだろう。それと、このカステポーのどこかにいるブラックドラゴンの出現ポイントにも。チューニングをしに、留三郎や伊作の元へと戻るのはそれからだ。
 あまり遅くなればそれだけ不機嫌になるだろう、若干親離れ(?)できていないカップルを思って、泰晴はもう一度溜息を吐き出した。

 


「おはよう、“艶夜”」

 柔らかく、小さな子供に語りかけるような優しく穏やかな母の如き声で、兵助はファティマシェルに深々と腰掛けながら相棒であり、主人の大切な騎体に語りかけた。実質、完成して間もないこの騎体は幼い子供のようなものだった。騎体に、人格というものを認めるのであれば。事実、MHには意志が存在している。只人では理解しきれないその認識は、ファティマや騎士、そしてマイト達にとって、MHが多少の意志を持つ事は至極当然のように知られ、認められている事だ。
 泰晴の為だけに作られた“艶夜”は、実戦に出た事はないが、白雪の戦闘データをもとにある程度の調整が既になされている。そのために、赤子と言うには少しばかりその精神と呼ぶべきものは成長していたが、まだまだ兵助にとっては幼い子供だった。

【ま、ま】

 音、と称することの出来ない音が、ヘッドクリスタルを通して兵助の耳に届く。その声は縋るようであり、困惑しているようだった。おそらくはその両方なのであろう。今まで“艶夜”はファティマシェル以外に人――兵助はファティマではあるが――を乗せた事はない。“艶夜”は戸惑っているのだ。コクピットに乗り込んできた、騎士の存在に。

「怖がらないで、“艶夜”。今コクピットに座っているのは、私たちがずっと待っていたマスターだ」
【ぱ、パ】

 短く流れた電子パルスに、兵助の頬がふわりと染まる。幼いMHを宥め、徹底して騎体の状態を捕捉し騎士を助ける為の存在たるファティマを母とするならば、確かにその力で持ってMHを動かし、戦場を駆ける騎士は父だろう。けれども、ファティマとその騎士という認識と共に、遠い場所から泰晴を見続け、彼の側に行きたいと思い続けていた兵助にとって、その言葉は少しばかり刺激が強かった。
 思わずそのまま硬直してしまった兵助を、“艶夜”は訝しむ。

【マ、ま?】
「……え、あ、あぁ…そう、下のコクピットにいるのが、パパだ。初めましての挨拶をしようか」

 どうしたの、と言わんばかりの声に、兵助はぎこちなく頷いて見せて、頬を赤く染めたまま幼いMHに騎士への挨拶を促す。そしてコンマ数秒の内に下のコクピットでコンソールがカタカタと揺れる音が響き、「コントロールが来たか。初めまして、“艶夜”」と小さく声が返った。それに、“艶夜”が若干浮き立つような電子パルスを放った。騎体に人格を認め、言葉を返した主に喜んでいるのだ。兵助の表情も、柔らかく和む。
 そして、騎体のチェックを始めた泰晴の望むものを、人のように表現するのならばうきうきしている“艶夜”をあやしながらもパネルへと表示させていく。しばらくして、コクピット内で小さく溜息をつく音がした。それにどうしたのだろうと小首を傾げ、コクピットとの通信を繋げる。

「どうかなさいましたか、マスター」
『お前、こいつ動かせるか?』

 こつんと、音がする。コクピット内を軽く小突かれたのだろう“艶夜”は、初めての事に少しばかり驚いてから楽しい、とでもいうような電子の波を兵助に伝えた。

「問題ありません。三郎と“白雪”ほどではありませんが、この子と私は対の存在――マスターの為だけにあるもの。どんなMHよりも、マスターの望み通りに動く事が出来ると自負しております」

 “艶夜”の反応に微笑ましくなりながらも、確かな自信を持って主の言葉にそう返す。自信に彩られた母役の笑みに同意する“艶夜”は、再度コンソールを小刻みに揺らした。

『ならいい。調整が終わり次第、カステポーで実戦だ。ドーリーの用意も出来てるんだろう?』
「はい。“白雪”同様、専用のドーリーがございます」
『……それも新作か』
「はい。地上走行型のモータードーリーです。基本的な構造は“白雪”と変わりませんが、マスターがより快適に過ごせるよう、現時点で可能な改善は全て施してあります」

 三郎からの報告が入る度に喜々として図面を広げ、あーでもないこーでもないと額をつき合わせて泰晴専用のドーリーをどう改善しようかと、昼夜なく議論してた博士二人の姿をデータの中からひっぱりだし、微笑ましいような羨ましいような思いを抱いていた――何せ兵助はファティマ。最も泰晴の役に立てるのは戦場に出た時だ――自分もついでに思い出して、兵助はこれからこの人の役に立つのだから、と嫉妬に胸の中で波打つ感情を宥めた。
 まだ完全に受け入れられたとは思わないが、顔を合わせてすぐの相手を信じられる訳もない。それはこれから確実に、誠実に積み上げていけばよく、そうしなければならない類のものだ。自分たちの関係はこれから、なのだ。

『水と食料は?』
「マスターがこの工房に到着する前日に、肉、野菜、果物、調味料や香草を各種フリーザーに詰め込めるだけ用意してあります。非常食やレーション、パンも同様に。水は“白雪”に積んでいた倍の量を貯蔵しています」

 それを手配したのも詰め込んだのも、兵助と、好意から手伝ってくれた勘右衛門であったが。ちなみにマイト二人はというと、格納庫の充実と医療器具や薬などの補充の方に夢中になっていた。ファティマや騎士では使えないような専門的なものが間違って入っている時があるので――マイト二人は彼らの視点で必要なものを入れてしまうため――勘右衛門と二人で目を皿のようにして専門家にしか使用できないものを探し、放り出す羽目になったが。それもまた積まれ直しているような気がする。昨日取り出した時点で、全く諦めていなかったようなので。
 そんな事を思い出していると、コクピットにいる泰晴は引っかかる言葉があったのか、怪訝そうな声を出した。

『倍……?』
「マスターが湯船に浸かりたいと仰っていたと聞いた食満博士が、喜々としてドーリーに浴槽を積んでいたのでその為かと」
『なるほど』

 ちなみにその浴室は、ドーリーの中でもそれなりに予算が割かれていた部分である。装飾はごくシンプルでありながらも、ひたすらにリラクゼーションを目的とした機能が充実していた。他にも、ドーリーの振動の伝導率の軽減だとか、寝室や設置する家具の材質だとか。もしかしたらMHを作るとき以上に楽しそうだったかもしれない。いや、楽しかったのだろう。両方の画像データを比較すると、三割増で笑顔が多い。

『なら騎体が十全なら出発は明日。微調整は移動と同時進行だ』

 泰晴の中の疑問が解消されたのか、すっきりとしたような声が出立の日にちを告げる。今日、両博士の工房兼住居に着いたばかりだというのに、いやに早い出発だ。これは泰晴を慕っている二人がほぼ100%の確率で食い下がって引き止めてくるだろうと、予測が出来た。だからこそ、ずるずると居座らぬうちにこの工房を出ようとしているのだろうけれど。
 放浪している時間が多く、滅多に顔を出さない騎士の友人と少しでも長い時間を過ごそうと思っている博士たちの気持ちは、兵助にもよく理解できた。けれども、満面の笑みと共に主へと返す言葉はたった一つだ。

「Yes,Master」

 だって、兵助はこれからずっと、泰晴の側にいられるのだから。



 何だ、このアホみたいにピーキーな騎体は。
 ファティマと言うには多少憚られる精神を持ったファティマ――兵助をファティマシェルに押し込み、騎体を起動させてその造りや反応スピードやら気になるところをざっと見た結果、呆れと共に浮んできたのはそんな感想だった。三郎と共に駆っていた“白雪”も他のMHと比べるとはるかに性能がよく、生半可な騎士ではすぐに転倒するか暴走させて潰してしまうだろう繊細な騎体ではあったが、泰晴が受け取らざるを得なくなった“艶夜”ほどではなかった。
 これは本当に泰晴か、かなりの実力者――それこそ剣聖と呼ばれるレベルの騎士ではければ乗りこなせはしまい。ファティマとて、エトラムルでは騎体の性能に振り回される。銘入りの、本当に最高級品でなければ騎体の制御など不可能だろう。
 頭が痛い、と泰晴はこめかみを揉んだ。本当にコレでは受け取らざるを得ない。こんな危険な騎体を野放しにしておくには、泰晴の良心が邪魔をしたし、何より大切に思っている友人が泰晴の為だけに、才能の全てをつぎ込んで作り上げただろう騎体を受け取らないわけにはいかなかった。
 深々と溜息をつく。

『どうかなさいましたか、マスター』

 その溜息を聞きつけたのか上から降ってくる声に、泰晴はぴくりと眉を震わせた。十年、三郎と共にMHを駆っていた間に少しはマシになったが、元々はエトラムルでMHを駆っていた泰晴は、騎乗している間に自分や部隊の人間やその所有ファティマ以外の声が聞こえるという状況に慣れてはいない。けれども、今まで聞いてきたファティマの声よりも若干感情の滲んだ声はさほど不快ではなかった。

「お前、こいつ動かせるか?」

 この、馬鹿みたいに制御の難しい騎体を。
 シートにもたれ、コクピットの内側を軽く指先で弾いて上を見上げる。
 鈴を転がすような、というよりも乙女型にしては落ち着き払った低めの声が、柔らかく泰晴の懸念を否定した。

『問題ありません。三郎と“白雪”ほどではありませんが、この子と私は対の存在――マスターの為だけにあるもの。どんなMHよりも、マスターの望み通りに動く事が出来ると自負しております』

 芯の通った声が高らかに宣言する。その声に同意するかのように、コクピット内のコンソールがカタカタと揺れた。そのどちらもが、どこか誇らしそうな雰囲気を纏っている。確かに、この騎体ならば泰晴の動きについてくる事が出来るだろう。この、超帝國の騎士の血を混じりけなく受け継ぐ騎士の動きに。他のどんなMHにもファティマにも――あの前代未聞のシンクロナイズドフラッターシステムを積んだ三郎と“白雪”が勘定に入っていないのは仮制御下故当然である――なしえなかったことができるに違いない。それだけぶっ飛んでいるのだ、この騎体も、泰晴の能力も。
 つくづく、騎士と言うものは血の濃さがものをいう。騎士と名乗り、強くある為にはかけがえのないものであり、世界にとっては前世紀の遺物。戦う事だけに特化し、種の保存すらも半ば放棄している劣性遺伝子の塊。人として騎士を名乗るものとは少しばかり異なる種。それが泰晴と言う存在だった。その血を、強さを疎んだ事はない。むしろ淡々と受け入れ、そういうものだと納得している。全力を出せず鈍重な動きしか出来ないMHや、泰晴の指示や動きについて来れないファティマやエトラムルにストレスを感じる事はあっても。

「ならいい。調整が終わり次第、カステポーで実戦だ」

 ついでにオニキスにも顔を見せておくか、とまだ受精卵であった時代の保護者であったブラック・ドラゴンを脳裏に浮かべ、ちらりと思った。釣り合ったファティマとMHを持たぬ事を嘆き、心配させっぱなしのドラゴンに多少の孝行はすべきだろう。完全に、上にいるファティマを受け入れたわけではないが。

「ドーリーの用意も出来てるんだろう?」
『はい。“白雪”同様、専用のドーリーがございます』
「……それも新作か」
『はい。地上走行型のモータードーリーです。基本的な構造は“白雪”と変わりませんが、マスターがより快適に過ごせるよう、現時点で可能な改善は全て施してあります』

 一体どれだけ金をつぎ込んで造ったんだ。新品のファティマ一体を得るだけで、払わねばならない金額は50億ほど。兵助や三郎のような超弩級のファティマだと、1000億は軽く行く。そこに同じく新品のMHにドーリーとくれば、どれだけの金が飛んでいく事やら。色んな騎士団に引っ張りだこで、雇われれば新しいファティマを得られるくらいの報酬は簡単に得られる上に、その金額もほとんど使わず、戦場に出てもMHにほとんど傷をつけずに戦闘を終わらせるために修理代を出す事もない。その上、特殊な身の上の為に外見年齢の倍以上は生きている泰晴である。どこかの国家予算程度の金額は有り余っているので支払いに困るような事はないが、それを見越して金に糸目をつけなかっただろう二人がどれだけ好き勝手したのかは気になった。

「水と食料は?」
『マスターがこの工房に到着する前日に、肉、野菜、果物、調味料や香草を各種フリーザーに詰め込めるだけ用意してあります。非常食やレーション、パンも同様に。水は“白雪”に積んでいた倍の量を貯蔵しています』
「倍……?」
『マスターが湯船に浸かりたいと仰っていたと聞いた食満博士が、喜々としてドーリーに浴槽を積んでいたのでその為かと』
「なるほど」

 本当に泰晴が快適に過ごせるように改良してしまっているらしい。“白雪”ですら、今まで過ごしてきたドーリーよりも過ごしやすく、ドーリーであることすら疑ってしまうほどだったと言うのに、これではMH運搬用の車両というよりも、MHも積む事ができる移動家屋だ。いくら居住施設も備える長期滞在が可能なものだとはいえ、これはないのではないだろうか。ありがたく受け取らせてもらうが。

「なら騎体が十全なら出発は明日。微調整は移動と同時進行だ」
『Yes,Master』

 応える声に喜色が滲んでいる。何がそんなに嬉しいのか理解できないが、それで何か不都合があるわけでもないので疑問を抱く前にその思考を放り出し、コクピットのハッチを開く為にコンソールへと手を伸ばした。


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